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図解で紐解く「サッカーのファクトフルネス」

図解で紐解く「サッカーのファクトフルネス」

サッカー 情報 ICT 高校生以上

世界のフットボールに関する情報は、日々慌ただしく凄まじいスピードで流れて行きます。それはメディアの大小を問わず、根も葉もない移籍の噂やクラブ運営のゴタゴタ、そして選手のゴシップ記事まで。そうこうしている内にも大局は少しずつ、気づいた頃には大きく動いているものです。

この記事は『図解で紐解く「サッカーのファクトフルネス」』という表題ですが、普段私が個人のアカウントで投稿している図解(インフォグラフィックや簡易的なチャート)を通して、サッカーの経営やファイナンス情報、また市場価格や選手の身長といった一見何の変哲もない形態データなどを用いることで、より客観的に、そしてサッカーを通して読み手の世界を拡張し、知見を深めて行くきっかけになればと思っています。

なおこちらの記事に掲載されている画像ですが、SNSの投稿対象が日本だけでなく世界中のユーザーに向けて発信する目的で制作されているため、インフォグラフィックは全て英語表記となっています。予めご了承ください。

J1+J2リーグ ボール支配率とシュート成功率の比較グラフ

2020年のJ1リーグとJ2リーグ40クラブを混ぜた、「ポゼッション率とシュート成功率のインフォグラフィック」になります。サッカーはチームスタイルを1枚絵で表現するのは難しいのですが、このように多くのチームを並べることで相対的にみるようにすれば割とわかりやすいかもしれません。もちろん、カテゴリも違えば試合数も違うのでデータとしては弱いのですが、実際に可視化してみるとなんだかオウムガイの"対数螺旋"ぽい!となり作成してみました。

シント=トロイデンVVを経由した3選手の市場価値が一気に高騰

欧州クラブのオーナーとして日本企業が参画しているシント=トロイデンVV(以後STVVと表記)。そのSTVVを経由した日本代表の冨安、鎌田、遠藤の3選手は市場価値を一気に高めました。遠藤は年齢的にもシュトゥットガルトでキャリアのピークを迎えたため市場価値は下降気味ですが、アーセナルに所属している冨安と、フランクフルトの中心選手として活躍している鎌田は高い水準をキープしています。

ここで読み違えてはいけないのは決して「STVVに所属した」ことだけが彼らの価値を高めた要因ではないという事です。移籍先での活躍こそが重要なファクターです。なおSTVVは18-19シーズン、ベルギー国内リーグを7位でフィニッシュするなど、ショーケースの役割も果たしタイミングよく3選手を送り出すことが出来ました。直近2シーズンは降格圏手前の順位に留まってはいるものの、確固たる経営ビジョンに則ったクラブの強化施策は、いまのところ実践できていると言えます。

特に冨安と鎌田の2選手はJリーグに居たころと比べ、欧州の市場に乗る事でマーケットバリューが指数関数的に増加しています。野心を持った若い選手達にとって、どれだけ「欧州挑戦」が魅力的であるかは一目瞭然。ただ、欧州に挑戦しても日本国内にいたころより市場価値を落としてしまう選手も存在しているため、日本を出るタイミングや新たな所属先選びは、(代理人の手腕を含め)より慎重になる必要があるでしょう。

EUR02020でもっとも贅沢なスカッドを抱えるのは…

パンデミックの影響で開催が1年遅れたEURO2020。Transfermarktの評価によると推定市場価格のトップはイングランドの11億9000万£(約1850億円)。次いでフランスの9億2520万£、ドイツの8億4285万£となっていました。2020大会出場の24カ国における最小の値は北マケドニアの5562万£。

なおナショナルチームのスカッドの価値の総和はクラブチームよりも直接チームの成績と必ずしも相関するわけではなく、この大会は市場価値6番手のイタリアが優勝。市場価値では1番手だったイングランドは惜しくも準優勝となりました。

東京五輪大会に出場した16ヶ国 - 各国スカッドの推定市場価値ランキング

2020年の夏に東京で行われた五輪におけるサッカー競技での、出場国の各スカッドの推定市場価値ランキング(MVはメンバー発表時点のもの)がこちらの図。マーケットバリューだけでみるとスペインとブラジルの2ヶ国が他を圧倒していて、実際その2カ国が決勝進出を果たしました。

なおこの大会での最高額はスペイン代表ぺドリ(FCバルセロナ所属)の80.00m€となっており、我らが日本代表は77.75m€で全体の8番目に位置していたようです。優勝は市場価値2番手のブラジルで、準優勝は市場価値1番手のスペインでした。こちらは割と下馬評通り、順当な結果だったと言えます。

代表選手の体格をチャートで比較。デンマークが2021年のチャンピオンに。

こちらは2021年のナショナルチーム別体格(平均身長/平均体重)チャートで、FIFAランク30位以内の国を対象としたもの(30位ベネズエラの体重のソースが見つからなかったため、31位のイランを繰り上げで扱っています)。なおバブルチャートは選手の推定市場価格平均で、その国のおおよその(質的な)強さを表しているとお考えください。ちなみに2018年のW杯ではセルビア代表が身長/体重で覇権を握っていましたが、今年はデンマーク代表が平均で186.5cm/81kgとフィジカルチャンプに。

エリア別でみてもヨーロッパ、特に北欧は際立っていますね。ほぼ欧州生まれ欧州育ちの体躯に恵まれたセネガル代表がこの位置にいるのも納得。ちなみにちびっこ側にカテゴライズされる日本代表はチリ代表とほとんど一緒。もちろん身長と体重でサッカーをやる訳ではありませんが、切り口によっては身長も重要なファクターになるようです。

なおいわゆるサッカー強豪国と呼ばれるようなフランスやイングランド、スペインやベルギー、オランダなどは表の中央あたりに集まっていますが、これは偶然というよりも、「民族の多様性が複雑なナショナルチームほど、このようにマッピングした際には平均的になる」という見解です。

現代サッカーにおいて身長は重要か?バイエルン・ミュンヘンの一例

欧州サッカー界において"超名門クラブ"の1つとされるバイエルン・ミュンヘン。当クラブにおける過去50年間での選手の平均身長を調べてみると、平均身長は約5cm伸びていました。特に顕著なのは高身長が求められるゴールキーパーとセンターバック、そしてチーム内の身長の振り幅は8cmから18cmと2倍以上になっています。これらからも判るように「サイズが必要なポジションはより大きく」が傾向としてあり、結果として"選手の大型化"は未だに続いているようです。

現在欧州でプレーしている日本人選手の数は? ※2022/6/25時点

移籍情報サイトTransfermarkt(https://www.transfermarkt.jp/)に登録されている「ヨーロッパのサッカークラブに所属する日本国籍の選手」ですが、2022年の6月末時点で200人をゆうに超えています。そのうちドイツは109人!無論、トップリーグの登録は数えるほどしかありませんが、ドイツ国内リーグは下部リーグも組織がしっかりしており、3部以下のリーグにサッカー留学などを行っている選手などもかなり多いようです。

カタール大会に所属選手の殆どを送り出したバイエルンとバルセロナ、そしてマンチェスター・シティ

カタールW杯全出場選手の所属クラブ一覧のインフォグラフィックになります(※該当選手が6人以上のクラブのみ)。こちらは大会開始前時点のデータになりますが、最多はバイエルン・ミュンヘンの17名、次点でバルセロナとマンチェスター・シティの16名となっていました。なおこの3チームはそれぞれ、シーズン途中の中断期間にW杯が開催され、そこに多くの選手が駆り出されたにも関わらず、全て国内リーグを優勝するという快挙を成し遂げています。