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スポーツを題材にした問題を作って、チーム全員の文章読解力を鍛えよう!

【この問題、あなたは解けるかな?】スポーツを題材にした問題を作って、チーム全員の文章読解力を鍛えよう!

サッカー 国語 文章読解 情報処理 高校生向け

はじめに: 当記事の概要

昨今、中高生の「文章読解力の低下」が話題になっています。難しい文章は苦手、テストで点数が伸びない…なんて経験をした方も多いのではないでしょうか。たとえば数学。そもそも計算が苦手である場合も考えられますが、学生時代は単に問題文を読解できていなかっただけで、設問を理解して要領を得ることで、大人になってから数学が得意になるケースもままあります。なので、「読解力」を身につけることはいつから始めても遅くないのです。

これは学生時代の部活動だけでなく、社会人になってからも往々にして起こりうる事象ですが、「全員がチームのコンセプトを理解しているはずだ!」と認識していても、実は半数近くの人が別の景色(比喩)を見ていて、順調に澱みなく進むはずの計画がのっけから混沌としてきたりします。どれだけインプットとなる情報が優れていても、誰もが"1"の説明だけで"10"に辿り着ける訳では無いのです。今や早いうちから「プログラミング言語」を学習する時代ではあるものの、まずは人間が扱う「自然言語」を、自前の脳味噌でロジカルに処理できる訓練を行う必要があるのは言うまでもありません。


という訳で、よくある試合映像の振り返りといったものだけでなく、サッカーをはじめとするスポーツを題材にした"脳トレ感覚で行える”設問や、日々の習慣付けなど「読解力を鍛えるためのトレーニング手法」をいくつか紹介していきます。ぜひ参考にして、スポーツをもっと楽しく、そして学びの多い時間にして頂けたらと思います。

それでは早速、サッカーを題材とした「文章読解力」を問う設問を出題してみようと思います。前提となりうる「高度なサッカーの知識」は不要であり、設問の文章から読み取れるようになっていますので、特に制限時間などは設けず、まずは落ち着いてトライしてみてください。

読解力を問う設問①: 試合分析レポートを読み取ろう

【問題1】
次の試合分析レポートから、確実に正しいと判断できる選択肢を全て選べ。(正答選択肢を全て選べた場合に"正解"とする)

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★試合分析レポート
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◾︎対象試合:
チームA 対 チームB

◾︎分析対象:
チームAのオフェンスについて

◾︎分析結果:
チームAは試合を通して攻守の切り替えの意識が高く、攻撃パターンとしてはカウンター時の縦に早いオフェンスが得意で、特にサイドから供給されるクロスボールから多くの得点機を生み出していた。中でも左サイドバックの6番の選手が積極的にドリブルで突破し、チームAで最もチャンスを創出していたことがデータからも読み取れる。また、MFで司令塔の役割を持つ10番の選手が正確なパスで攻撃を組み立てていた。加えて、FWの11番の選手は献身的なプレッシングが特徴で、試合を決定づける得点も挙げている。

【問題1の選択肢】






該当する選択肢を全てチェックし終わったら、次に移りましょう。

読解力を問う設問②: 文章から適切なグラフを導き出そう

【問題2】
下記にて説明されている内容を表す図として適切なものを選択肢から1つ選べ。

年々多国籍化の進むプレミアリーグでは、2024年時点でリーグ所属選手のうち55%がイギリス以外の出身国の選手となっている。その内訳を見ると、「フランス・アイルランド・スペイン・ポルトガル・オランダ」が多くを占めており、その5カ国を合わせた割合は31%となっている。

なおここで定義されている”イギリス出身の選手”は、「イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランド」の4つの地域を合わせたものとする。

【問題2の選択肢】





もう一息です。次が最後の問題になります。

読解力を問う設問③: さまざまな条件を整理してみよう

【問題3】
以下の文章を読んだうえで、確実に正しいと判断できる選択肢を全て選べ。(正答選択肢を全て選べた場合に"正解"とする)

チームXには右利きと左利きの選手が8:2の割合で所属しており、今シーズンにおいてスタメンに選ばれていない選手は全員左利きである。なお、Y社のスパイクを履いている右利きの選手は1人もいない。

【問題3の選択肢】




ここまでの3問全てを回答し終えましたら、以下の"答え合わせをする"ボタンを押してみましょう。完答であれば結果のところに「正解」、1問でも間違えていたら「不正解」と表示されます。それではどうぞ!

結果:

【問題1〜3】のヒント

上記の3つの問いにおける答えはここでは明記しませんが、それぞれの設問における正解が分からない方にヒントとなるよう、簡単な解説を残しておきます。

まず【問題1】です。ここはシンプルに「分析結果のテキストに書かれていること」だけをチェックするだけでOKです。設問にも「確実に正しいと判断できる選択肢を〜」とありますので、曖昧だなと思う選択肢はスルーでOKです。ちなみに「"攻撃"と"オフェンス"で表記が揺れてる!」みたいなツッコミは無しでお願いします。

次に【問題2】ですが、「55%がイギリス以外〜」とありますのでイギリスが45%でない(そもそも単位からして違う)という理由から、まず(ⅰ)は選択肢から除外されます。なおここでのポイントは「その5カ国を合わせた割合は31%」の"31%"がどこに対しての割合なのか?という部分になるかと思います。何度も問題の文章を読み直して、パイチャートとも時間をかけてにらめっこしてみましょう。

最後の【問題3】は、「〜に選ばれていない選手は」だの「〜の選手は1人もいません」といった敢えてややこしい表現をしている上、選択肢の内容もとってもイジワルです。であるからして、この手の設問に対する"推論"を行う場合は、「仮に該当する選手がn人いた場合…」という感じで、条件を紙に書くなどすると整理が捗るかもしれません。


以上を踏まえたうえで、まだ正解に辿り着けていない方は再度、それぞれの設問に挑戦してみてください。

得意なスポーツを通じて、読解力を鍛えるトレーニングを日々実践してみよう!

それでは改めて、日々の学校生活や部活動、部内でのチームミーティングや分析アプリを使った試合映像の振り返りといった場面で実践できる「読解力を鍛えるためのトレーニング手法」をいくつか紹介します。


1. スポーツを題材とした設問を考え、みんなに出題して「読解力UPの相乗効果」を図る!

当記事でも大上段から論じ続けておりますが、文章読解力は学校における授業だけではなく、脳トレのような感覚で取り組んで「論理的思考」を楽しみながら習得することも非常に大切です。何を学ぶにしてもスポーツというものはお題目として優秀ですので、勉強に苦手意識がある方でも「あの難解な事例もサッカーに置き換えたら理解できる!」とか「ああ!バスケでいうこの状況ね!」みたいな感じで解像度が爆上がりすること間違いなしです。

また、読解力を高めるためには「インプットだけでなく、積極的に他人にアプトプットすることが重要」です。誰かが作った問題をただ解くだけでなく、自分で面白そうな問題を作って色んな人に挑戦状を叩きつけてみましょう。そこから得たフィードバックはあなたを何段階も成長させてくれるはずです。


2. 練習内容や試合における記録、また自分のプレーやコーチからの指示内容をサッカーノートにまとめる!

今や小学生のうちから各種スポーツにおいてノートを付けることは珍しくなくなりました。ですので、既に習慣化している方も多いかと思います。練習内容や試合の状況を言語化しノートに書き留めることで、試合の流れや自分のプレーを整理することができる上、あとから読み返した際に自らの"理解の進捗度"を確認できたり、「この表現わかりづらいな…もうちょっと工夫してみよう」といった様に"改善のためのフィードバックループ"を自然と行うことが出来るようになります。

また、練習中や試合中に監督やコーチから受ける指示や、チームメイトとのコミュニケーション内容もメモしておくと良いでしょう。自宅でメモを読み返しながら、その時の指示の内容や意図を落ち着いて分析することができます。指示を正確に理解し、適切な行動をとることができたかを振り返ったり、それでもわからないことがあれば、改めてアドバイスをくれた本人に直接聞いてみることも大切です。


3. 試合の映像を見て、チーム戦術や自分のプレーを分析して整理する!

普段からプロの試合を観戦したり、自分たちの試合映像を振り返りながら、誰かとその内容を語り合うことがあるかと思います。自分のプレーやチーム全体の戦術について、自分の言葉でスラスラと説明できるでしょうか?実はこれも充分に読解力のトレーニングに繋がります。プレーや試合における「文脈を読む」というやつですね。試合中の文脈を理解するには、まずは状況を正確に読み取ることが重要です。また、パスやシュート、タックルなど試合中のアクションを注意深く観察しその意図を推測する訳ですが、これらは文章を読むときにも必要なスキルと成り得ます。

更には、そういった分析やディスカッションを通して、自分の考えを論理的に説明する力も養われます。自らの意見を明確に伝え、相手の意見を理解しながら議論を進める。これは、チームワークやコミュニケーション能力を高めるのにも役立ちます。もちろん、試合中の全てのプレーや戦術を理解するのは難しいでしょう。しかし、その過程でわからないことがあれば、積極的にチームメイトや顧問の先生に質問してみましょう。そのやりとりを通して、自分の読解力不足を認識し、改善しようという意識が芽生えるはずです。

最後に

これらのトレーニングを日々実践することで、スポーツに関する知識や理解が深まるだけでなく、読解力や分析力、論理的思考力などの能力も向上させることができます。また、チームメイトとのコミュニケーションも円滑になり、チームワークも向上するに違いありません。ぜひとも大好きなスポーツを通じて、さまざまなシーンにおける「読解力」を鍛えていただければと思います。